破壊的イノベーションを求めて

ある企画のリサーチで、『<電機・半導体>大崩壊の教訓 電子立国ニッポン再生への道筋』という本を読んでいる。題名の示す通り、80年代から90年代初頭にかけて世界トップを走っていた日本が、如何にして急降下の一途をたどり、欧米だけでなく台湾や韓国に抜かれ敗退にまで至ったかを綴っているビジネス書だ。 

その中でシャープ、パナソニック、ソニーなどが敗退した大きな要因として引用されているのが、<破滅的イノベーション>に対する理解力の欠如だ。ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセン教授が1995年に発表したこのコンセプトは、端的に説明すると、従来の価値観を覆す変化をもたらし、新しいマーケット開拓の機会をもたらすイノベーションという意だ。圧倒的な技術力で、80年代に一度は<破滅的イノベーション>で世界を制した日本は、それ以後<技術革新>を掲げながらも、持続化と効率化ばかりに目を向け、リスク削減を重視するあまりに<破滅的イノベーション>を産み出さなくなった。結果として、流動的な世界マーケットに対しても遅れをとり、深い溝が大きくなりつつある。


そこで求められるものはマーケット力。外資系の会社では、博士課程卒のトップエンジニアを一定期間マーケッターとして雇い、エンジニアに何が求められているかを把握してもらった上で技術を活かすポジションにまわしている。それに対して日本企業は、修士課程卒をエンジニアとしてそのまま採用するのが主流。日本の学生達も自分の専門を活かせる仕事がしたいというのが一般的のようだ。そればかりか、日本企業内でのマーケティング部門は基本的には市場調査という理解程度で、経営学などに比べるとレベルが低いと思われがちだという。

先月参加したアムステルダムのドキュメンタリー映画祭でも、世界マーケットを課題にしたワークショップでは、デジタル化により従来の配給体制が崩れいく過程において、マーケットと配給に特化したプロデューサー(PMD-Producer of Marketing and Distribution)を制作段階から雇う必要性が強調されていた。要するに、製品も飽和状態、世界マーケットでの従来の需要の縮小が続く<いま>の時代において、業界業種は様々あれど、エンジニアやフィルムメーカーに対して求められていることは同じ。マーケットを踏まえた上で、<破滅的イノベーション>を如何にして達成できるかである。フィルムメーカーが作品を創れるのは当たり前。それだけではもはや仕事を達成したことにはならない時代が到来しているのである。

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About 山本 兵衛

米マサチューセッツ州の高校を卒業後、ニューヨーク大学Tisch School of the Artsにて映画製作を学ぶ。卒業作品『A Glance Apart』がニューヨークエキスポ短編映画祭にて最優秀フィクション賞を受賞。またフランスの国営チャンネル Arte、日本ではシネフィルイマジカにて放映。アメリカの配給会社 Kino Internationalにて4年間マネージャーを務めた後、ハリウッド大作『シャンハイ』などに現場通訳として参加しながら、監督/プロデューサー/脚本家として活動。自身の短編作品が、ロッテルダム国際映画祭やトライベッカ映画祭などで上映されている。ドキュメンタリー『サムライと愚か者〜オリンパス事件の全貌』で長編デビュー。青山学院大学にて非常勤講師を務める。

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