いまTV/ネットに才能が集結 その2

前回に引き続き、筆者の独断と偏見で選んだ映画以上の面白さ抜群のTVシリーズを今回も紹介したいのだが、その前に、なぜアメリカでいまTVに映画界の才能が集結しているのか、もう少し話したい。

先日『ジム・キャリーはMR.ダマー』や『メアリーに首ったけ』の監督ボビー・ファレリーに会う機会があった。20年ぶりの続編『帰ってきたMr.ダマー バカMAX!』を引っさげての来日だったが、近年コメディ映画に投資が集まりにくい状況を残念そうに語った。その理由は、ハリウッドが世界マーケットを意識するようになり、文化の違いによって伝わりにくいコメディよりも、解りやすいアクションやスーパーヒーロー物に食いつく傾向にあるからだった。カルト化しているジム・キャリー主演作品の続編でさえ、低予算にも関わらず投資が集まるまで4年かかり、一部アジアからの投資も募ったとファレリー監督。ますます一極化していくメジャーの中で、第一線で活躍する監督達でさえ、自らの才能を発揮できる方法を模索しなければいけないのだ。そんな状況が、映画界の才能が続々とTVに集結している理由の1つでもある。

『ピアノレッスン』のジェーン・カンピオンが監修したシリーズ『トップ・オブ・ザ・レイク 消えた少女』や、『エデンより彼方に』のトッド・ヘインズが手がけたシリーズ『ミルドレッド・ピアース』など、映画監督が手がけたTVシリーズの中で最も出色なのが、挑戦的なシリーズや作品を発表し続けるHBOが製作し、『闇の列車、光の旅』で鮮烈なデビューを飾ったケアリー・フクナガが監督したTVシリーズ『TRUE DETECTIVE/二人の刑事』だ。泥臭いルイジアナを舞台に、連続殺人鬼を追う2人の刑事の人間関係が描かれる。政治システムに群がる人間模様が万華鏡のように描かれるシリーズ『ハウス・オブ・カード』とは違い、反撥し合う偏屈な男2人の関係が、見えない連続殺人鬼によって次第に翻弄されていく様子に焦点があてられる。TVシリーズとしては、亀のようなテンポで進んでいくが、過去と現在が巧みに交差する構成の脚本と、主演2人マシュー・マコノヒーとウディ・ハレルソンの素晴らしいほど繊細な演技、南部のミステリアスな雰囲気や独特の音楽もうまく取り込んで、一気に見せてくれる。最後のエピソードで、20年越しにようやく信頼関係が結ばれるまでになる2人の人間関係が映画では味わったことがないぐらいリアルだ。シリーズ特有の時間的制約のない点を見事に活かして新しい感動を与えてくれる。

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『TRUE DETECTIVE』は1シーズン完結型シリーズで、日本ではスターチャンネルでオンエアー中。さらに、アメリカでは、キャストと監督を総替えした形でシーズン2がすでに放映されており、コリン・ファレル、レイチェル・マクアダムス、ヴィンス・ボーン、テイラー・キッチュという豪華キャストだが、評判はあまり芳しくなかったようだ。シーズン2に共通しているのは原案・脚本を担当したニック・ピゾラット。『TRUE DETECTIVE』で一気に注目される脚本家となった彼は、『荒野の7人』のリメイク版の脚本を担当している。

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そういう意味で、近年のTVシリーズは才能のある脚本家を次々に輩出していく場としても大いに注目されており、脚本家がエグセクティブ・プロデューサーやクリエイターとしてクレジットされる場合も多い。また拘束時間が長期間に渡ることも理由であろうが、『ハウス・オブ・カード』や『TRUE DETECTIVE』しかり、主演俳優がエグセクティブ・プロデューサーとしてクレジットされることもあるようだ。それだけ俳優陣も企画に惚れ込んでTVシリーズに参加しているということであろう。

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About 山本 兵衛

米マサチューセッツ州の高校を卒業後、ニューヨーク大学Tisch School of the Artsにて映画製作を学ぶ。卒業作品『A Glance Apart』がニューヨークエキスポ短編映画祭にて最優秀フィクション賞を受賞。またフランスの国営チャンネル Arte、日本ではシネフィルイマジカにて放映。アメリカの配給会社 Kino Internationalにて4年間マネージャーを務めた後、ハリウッド大作『シャンハイ』などに現場通訳として参加しながら、監督/プロデューサー/脚本家として活動。自身の短編作品が、ロッテルダム国際映画祭やトライベッカ映画祭などで上映されている。ドキュメンタリー『サムライと愚か者〜オリンパス事件の全貌』で長編デビュー。青山学院大学にて非常勤講師を務める。

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