また1年半、ブログをさぼってしまった。それはさておおき、ネットフリックスが今年の夏、日本に上陸した。いままでネット配信に関して懐疑的だった日本映画業界も、遂に本格的な動きを見せるようになった。競うように昨日アマゾンが日本で見放題のサービスを開始し、HULUやGYAOがTVコマーシャルでネット見放題サービスを盛んに宣伝し始めた。そこでいま最も問われるのが、配信される映像コンテンツのクオリティだ。
ハリウッドが、さらなる収益を求めて世界マーケットで通用する大掛かりなアクション物や、固定ファンがいるシリーズ/続編物、解りやすいスーパーヒーロー物ばかりに予算を注ぎ込む中、欧米ではネットフリックスを筆頭としたTV/ネット配信会社が、よりクオリティの高い映像コンテンツを求めて、内容的にも経済的にもリスクの高い映画や、野心的なTVシリーズを多く製作するようになった。この一連の映画ビジネスの動きの中で、フィルムメーカーにとって最も注目すべきなのは、いままでは映画に劣るとされていたTVシリーズが、新しいストーリーテリングの手法として注目を集めていること。そんな中でも筆者の独断と偏見で選んだ映画以上の面白さを与えてくれるTVシリーズを幾つか紹介したい。
その最たる成功例が、ネットフリックスが製作した『ハウス・オブ・カード〜野望の階段』だ。ハリウッド映像作家として最も注目を集めるデイビッド・フィンチャーが総合プロデュースを手がけたことで話題になったが、元々は90年代にイギリスで制作されたTVシリーズのリメイク。このシリーズの評価が高いのは、時間制限のある映画では描くのが不可能である人間模様や、複雑な政治の駆け引きが、様々な登場人物を通して巧みに描かれている点にある。さらに秀逸なのが、映画とは違ってじっくりと時間をかけて登場人物を描いている点だ。ケビン・スペイシー演じる主人公フランシス・アンダーウッドは、持ち前のサバイバル本能で政界を生き抜いてきた人物で、野心の為には殺人さえも厭わない悪人である。そんな悪人が時々カメラに向かって、彼なりの人生哲学と生き残るための方法論を語ると、観客は彼が悪人であることをついつい忘れて肩入れしてしまう。人間性の中に善悪が混在していることを思い知らされる作り方になっている。
上記クリックすると予告篇に
現在シーズン4まで製作されており、シーズン2までは日本でもDVD化もされているので未見の方はぜひレンタル屋、いや、ネット配信かオンデマンドでぜひ観て欲しい。中毒性の高いコンテンツなので翌日お仕事のある方は、気をつけて下さい。