ロッテルダム映画祭日記4

本日のテーマはニューメディア。VODやネットを中心とした新しい映像配給の形や、欧米で話題のトランスメディアに焦点があてられたレクチャーが目白押しだ。

自身で監督した作品を、独自のサイトにアップロードして3億ものダウンロードヒットを記録、爆発的に誕生した映像ファイルシェアサイト<VODO>の創設者や、Itunesなどのオンラインサービスに映像を提供している<Under The Milky Way>の話を聞くと、まだ確固とした新しい配給方法への確信は感じられないものの、可能性は充分に感じさせるものがある。インターネットの世界は、業界人にとってもまだまだ未知数の世界のようだ。

その次はアメリカで話題のクラウドファンディングサイト<Kickstarter>の映画担当者のプレゼンだ。創立わずか2年で爆発的な成長を遂げたサイトで、いままで映画制作につぎ込まれた募金総数はなんと45億円。53万もの企画がアップされ、5000ほどの企画が目標額を達成している。日本でもクラウドファンディングが話題になっており、我が社ヴェスヴィアスも自主配給する完山京洪監督作品『seesaw』の配給宣伝費の一部をモーションギャラリーにて協力を募っている。クリエーターと観客を直接結びつけて、お互い交流をはかりながら、参加型のクリエイティブ興行を実現させるのが目的である。ここで注目されるのが、アメリカで人気を得たクラウドファンディングが、日本を含む海外で通用するかである。自発的に参加してコミュニケーションを啓発させるコンセプトが果たして日本でも浸透するのか? モーションギャラリーでは、イランを代表する世界的に有名なキアロスタミ監督が、日本で撮影中の企画の製作費一部をクラウドファンディングで集めて話題になった。

午後からは新しいメディアの形としてもてはやされているトランスメディアについての講義。簡単にまとめてしまうと、メディア企画をさまざまな形で展開させる宣伝戦略だ。日本流に例えると、スタジオ系の作品が、TV、ネット、本、イベント、展覧会など連動で宣伝されるのを指すと思われがちだが、欧米で話題になっているトランスメディアは、単なる戦略ではなく、あくまで企画内容に対する理解を深くすることが最終目的となっている。ヨーロッパのテレビ局が企画した旧ソ連の崩壊をテーマにした『Farewll Comrades』は、ドキュメンタリー映画だけでなく、ネットコミュニティーやイベントに参加すると、さらにテーマについて学べて理解を深めることができる仕組みになっている。

様々なレクチャーを聞いて、休憩やランチの間にラボ参加者のプロデューサーと意見を交換しながら交流を深めていく。夕方のカクテルのあとは、シンガポールから参加しているプロデューサーと、マレーシアから参加している女性監督2人で、中華料理店で夕食に出かける。アジア料理を食べてほっとする瞬間。いきなりハイピッチの銅鑼の音とともに春節を祝う中国獅子が登場。今日は旧正月だ。どうりで店内は中国人家族連れで満席。4人でいろいろ話しているうちに、共通の知り合いが何人もいることを発見。『世界は狭いね』と呟くシンガポールプロデューサーのひと言に相槌を打ちながら、夜は更けていく。<続く>

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About 山本 兵衛

米マサチューセッツ州の高校を卒業後、ニューヨーク大学Tisch School of the Artsにて映画製作を学ぶ。卒業作品『A Glance Apart』がニューヨークエキスポ短編映画祭にて最優秀フィクション賞を受賞。またフランスの国営チャンネル Arte、日本ではシネフィルイマジカにて放映。アメリカの配給会社 Kino Internationalにて4年間マネージャーを務めた後、ハリウッド大作『シャンハイ』などに現場通訳として参加しながら、監督/プロデューサー/脚本家として活動。自身の短編作品が、ロッテルダム国際映画祭やトライベッカ映画祭などで上映されている。ドキュメンタリー『サムライと愚か者〜オリンパス事件の全貌』で長編デビュー。青山学院大学にて非常勤講師を務める。

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