ロッテルダム映画祭日記1

時は2002年。まだアメリカで暮らしていたころ、自身の短編監督作『ウィズダムデイ』がロッテルダム映画祭に招待されて訪れたことがある。一見作品内容だけでなく、生活環境からしても接点がないヨーロッパの都市で、しっかりとした反応が観客から得られたことに不思議な感動を憶えた。

それから10年後。偶然友人が推薦してくれた御陰で、ロッテルダム映画祭連動企画マーケット<Cinemart>のプラグラムの一部である若手プロデューサー・ワークショップ<ロッテルダム・ラボ>に招待されることになり、再びオランダ第二の都市を訪れている。1年ぶりのヨーロッパだが、あらためて、文化貢献の意識が市民の間にしっかりと根付いているのを感じさせられる。空港からホテルまで送迎してくれる40代前半の男性ドライバーは、映画祭のボランティア。毎年時間がある限り参加しているという。「映画祭はこの街にとって、とても大事なイベントなんだ。経済的にも効果があるし、街全体が活気づく。それに映画祭のスタッフほとんどがボランティアだよ」と語りながら、日本映画のことを盛んに聞いてくる。なぜ日本ではこのような文化貢献の精神が根付かないのだろうと純粋に不思議に思った。

ホテルに到着すると、登録を済ませるために、すぐに映画祭センターを訪れる。金曜日ということもあってか、たくさんの人で盛り上がっている。映画を観に来た市民と映画祭を訪れているゲストだろう。ロビーではアコースティックバンドのライブ音楽が流れ、自由な雰囲気を引き立てている。ああ、ヨーロッパの映画祭に来たと感じる瞬間である。

今回招待された<ロッテルダム・ラボ>は様々なレクチャーやスピード・デートと呼ばれる自己紹介セッションなどを通じて、個々のネットワークを拡げ、国際的な映画制作を後押しするために開催されているもの。公式イベントは明日、世界から集められた若手プロデューサー50人ほどが参加してのスピード・デートから始まる。1分間で自己紹介をしながら、次の椅子に移って30分ほど次から次へと自己紹介をしながら様々なプロデューサーに自己紹介するというハードなイベントだ。それ以後は毎日レクチャーやイベントが朝から夜まで企画されている。映画祭に参加しているものの、ほとんど作品を観る時間がない状態だ。

明日からは、喋りまくらなければならない。エベルギーを補充して備えなければ。金曜の夜に集う人々で賑わうロビーのカフェで、オニオンキッシュとサラダを食べたあと、おとなしくホテルに向って休むことにした。<続く>




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About 山本 兵衛

米マサチューセッツ州の高校を卒業後、ニューヨーク大学Tisch School of the Artsにて映画製作を学ぶ。卒業作品『A Glance Apart』がニューヨークエキスポ短編映画祭にて最優秀フィクション賞を受賞。またフランスの国営チャンネル Arte、日本ではシネフィルイマジカにて放映。アメリカの配給会社 Kino Internationalにて4年間マネージャーを務めた後、ハリウッド大作『シャンハイ』などに現場通訳として参加しながら、監督/プロデューサー/脚本家として活動。自身の短編作品が、ロッテルダム国際映画祭やトライベッカ映画祭などで上映されている。ドキュメンタリー『サムライと愚か者〜オリンパス事件の全貌』で長編デビュー。青山学院大学にて非常勤講師を務める。

One thought on “ロッテルダム映画祭日記1

  1. Hello Hyoe , I hope you can read this message. My name is David, I am an independent filmmaker argentina.I really like your work as writer/director of the short film “At Night”. I would like to see it again, but can not find . The short is somewhere to watch it online? Thanks for your time. Greetings from Buenos Aires.
    David

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