ニューヨーク映画三昧1

とある用事でニューヨークへ。2年ぶりに舞い戻って来た。まず目に飛び込んで来るのは、空港を行き交う体つきのごつい方達と肥満の方々。あの脂肪のつき方は日本人とは一線を画すものが‥… そして彼らの腕や足に刻まれている安っぽい刺青‥‥… 耳に飛び込んで来るのは<I=私>をやたらと強調する大声で空々しい話し声‥…

おっと失礼。このエントリーは映画三昧というタイトルだった。

到着翌日、早速映画館に足を運ぶ。お目当てはカンヌ映画祭で監督賞を授賞したニコラス・ウィンディング・レフン監督、ライアン・ゴスリング主演『DRIVE』。80年代風のエレクトロ・ポップとタンジェリンドリーム調の音楽に彩られたLA犯罪物で、アメリカでの評判も上々。ヨーロッパ人らしい感性みなぎる力作で、カンヌ監督賞も納得。音、色、フレーム、演出、どれをとっても監督のコントロールが行き届いた世界観が評価されたのであろう。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただこの監督作品へのいつもの不満も残った。前作『BRONSON』やアメリカで撮ったが不発に終わった『FEAR X』でもそうなのだが、スタイルやアプローチに監督自身がインスパイアされたであろう映画の数々が思い起こされるだけで、彼自身のテーマに対する視点や情熱が感じられない。本作品でもウォルター・ヒル監督の傑作『ドライバー』をはじめ、北野武作品のバイオレンス、デイビッド・リンチ作品を漂わせる凝ったセット、充分興味は魅かれる一方で、どこかで観たような気がする感覚。そして見終わったあとの、映画的感動の微妙な希薄さ。うまくリミックスされたカバー曲を聞いた後のような感覚を、最近よく映画でも味わう。監督自身の魂は聞こえない。マーティン・スコセッシやロバート・アルトマンからの影響を自他ともに認めるポール・トーマス・アンダーソン監督の作品群の印象にも似ている。似たようなアプローチを自身のオリジナリティにまで極めたのがタランティーノ監督なのだろうか。


 

『DRIVE』鑑賞後、同じシネコンで上映していたスティーブン・ソダーバーグ監督の『CONTAGION』にひっそり潜入。『チェ』2部作後、監督活動停止宣言して以来の新作(?)となるソダーバーグ作品はオールスター出演の大掛かりなウィルス発症物。こちらは冒頭からペースのはやい機械のように綿密に構成された群像劇。こちらも充分興味を魅かれて一気に観てしまうが、当然監督自身の魂は聞こえない。しかもこのような話しは『アウトブレイク』などでかなり娯楽色たっぷりにうまく映画化されている。面白くなくはないが、観なくてもよかった娯楽作品だった。


 

どちらも土曜の午後ということもあってかなり混んでいた。映画館から出ると夕方のショッピングに出かけるブロードウェイの人混みに巻き込まれた。空気は少し生温い。冷房が効き過ぎていた館内のせいだろうか、心地いいぐらいだ。

2年ぶりにニューヨークのダウンタウンを歩いてみたが、かつて感じていた新鮮な何かは感じなくなっていた。なぜだろう?と考えながら、母校のニューヨーク大学のキャンパスを通り過ぎ、チャイナタウンのスーパーに夕食の食料を買いに行った。

 

 

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About 山本 兵衛

米マサチューセッツ州の高校を卒業後、ニューヨーク大学Tisch School of the Artsにて映画製作を学ぶ。卒業作品『A Glance Apart』がニューヨークエキスポ短編映画祭にて最優秀フィクション賞を受賞。またフランスの国営チャンネル Arte、日本ではシネフィルイマジカにて放映。アメリカの配給会社 Kino Internationalにて4年間マネージャーを務めた後、ハリウッド大作『シャンハイ』などに現場通訳として参加しながら、監督/プロデューサー/脚本家として活動。自身の短編作品が、ロッテルダム国際映画祭やトライベッカ映画祭などで上映されている。ドキュメンタリー『サムライと愚か者〜オリンパス事件の全貌』で長編デビュー。青山学院大学にて非常勤講師を務める。

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